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活動報告

『議会と自治体』2024年9月号に議事録削除問題について寄稿しました

 日本共産党中央委員会が発行する『議会と自治体』に議事録削除問題について寄稿しました。民主主義を壊す今回の事態の重大さ、そして経過の異常さをぜひ知っていただければと思います。全文をご紹介いたします。

 

議会と自治体2024年9月号(日本共産党HP)

 

 

民主主義壊す議事録削除はゆるさない 羽鳥だいすけ

 

七月閉会した区議会第二回定例会において、私の一般質問での発言の一部が副議長の職権により削除されるという、民主主義を壊す重大な事案が発生しました。

 

「日本国憲法に反する」という指摘が「秩序を乱した」
 今回の事態の発端となったのは、私が六月十三日におこなった本会議一般質問の中で、地方自治法改定に関わって触れた「これまで、自民・公明政権によって、日本国憲法に反する数々の悪法が成立されてきましたが、今回の地方自治法改正案は、国と地方自治体の関係を根底から覆すものです」の一文です。これまで安保法制=戦争法や秘密保護法など、憲法違反を指摘された法案が多数成立されてきたことは周知の事実です。また、今回の地方自治法改定案についても、国による地方自治体に対する指示権の範囲の曖昧さが憲法に規定されている「地方自治の本旨」を侵害するのではないかとの指摘が多数ありました。私の質問は区長にこうした見解を問うものでした。
 一般質問後の六月十七日、議会運営協議会(中野区議会に設置されている議会運営委員会の議題などを議論する区民非公開の会議体)の場において、公明党から私の一般質問の正確な中身について確認したい旨の発言がありました。

 

執拗に議事録からの削除を求める自公自民党・公明党
 中野区議会会議規則には、定例会中に限り、発言した議員の申し出を議長が許可する形での議事録からの削除が認められています。また地方自治法第百二十九条には議長の発言取消命令という職権による削除の規定があります。
 当初、自民党・公明党は、当該発言について「事実誤認」「不穏当」「議会秩序を乱した」として、発言議員である私みずからがその一文すべてについて会議規則に基づく議事録削除を申し出るよう求めていました。しかし、私はその求めに応じませんでした。また議長は、当該発言は地方自治法第百三十二条にある「議員は無礼の言葉を使用してはならない」にあたらず、議員の発言の自由を尊重する立場から地方自治法第百二十九条に基づく議長権限での削除はしない旨の判断をしました。しかし自民党・公明党は、議長の判断を「不服」として、議会運営協議会を「休憩」させ、その後の議会運営を停滞させました。
 議会運営協議会は六月二十四日、二十七日、二十八日、七月一日と四回も開かれ、党議員団として繰り返し、みずから議事録削除を申し出ることはしない旨を明らかにし、議長も職権での議事録削除はおこなわない判断を表明し続けました。その度に自民党・公明党は判断に「不服」であると表明してきましたが、最終的には協議会の場から退席するという態度を取りました。みずからの主張が認められなければ、議会運営に応じない態度は看過できません。自民党・公明党のこの態度により、第二回定例会は当初の最終日である六月二十八日の議事が行えず、二十二時過ぎに七月二日までの会期延長を決定しました。その後、議案そのものは七月二日に議決することができたものの、あやうく区立学校以外に通う児童・生徒がいる家庭への給食費相当額の支援、定額減税を実施するための補正予算案などの議案や陳情が廃案となり、区政運営と区民生活に甚大な影響を及ぼす事態になりかねませんでした。

 

職務代行者の副議長が議事録削除を強行
 延長された定例会最終日の七月二日、議長が事故により欠席となり、副議長が職務を代行することになりました(地方自治法第百六条)。党議員団は、すでに何度も議長によって職権による議事録削除をしない旨が示されていたことから、議長がいないもとでもその意思に沿った対応を求めました。しかし公明党から選出されている副議長は、定例会後も地方自治法第百二十九条に基づく職権での議事録削除がおこなえる可能性を残すために、「発言取消しの留保」を宣告しました。
 その後、定例会閉会後の七月十日に議長が欠席しているもとで、議会運営協議会が急遽開かれ、副議長が地方自治法第百二十九条に基づいて、職権により、私の当該発言のうち「日本国憲法に反する」という部分を「事実誤認」「不穏当」「議会秩序を乱した」という理由で議事録から削除したことが報告されました。党議員団としてその場で抗議しましたが、判断が覆ることはありませんでした。

 

議事録削除は民主主義破壊の暴挙
 今回の議事録削除について二点指摘したいと思います。
 一つは、議事録削除によって私の質問の趣旨が大いに歪められたという点です。国会では日々、多数の法案が審議され成立しています。その中には、国民生活に重大な影響を及ぼす「悪法」と呼ぶべきものもあります。しかし、そのすべてについて、地方議会で取り上げるわけではありません。多くの人が指摘しているように、今回の地方自治法改定案は対等平等が原則である国と地方自治体の関係を根底から覆す、文字通り憲法違反の法案でした。だからこそ、私は質問に至る一文の中で「日本国憲法に反する」という文言を使いました。今回の議事録削除によって、まさにその根幹の部分が削除されたと考えています。
 もう一つは、中野区議会の民主主義が破壊されたという点です。
 四十二人の中野区議会議員それぞれに考えや意思があり、意見や見解に相違があることは当然です。そのため、特定の発言に対し、異議や抗議の声を上げることはありうることです。しかし、今回の経過の中では、本人による議事録削除の申し出もなく、議長が幾度にもわたって「職権での議事録削除はおこなわない」旨を表明していました。それを自民党・公明党は半ば議案の議決を人質に取る形で議事録削除を迫り、最終的には副議長が職権での削除をおこないました。これは民主主義を支える根本原則の一つである「議員の発言の自由」を侵害する重大なものです。私一人の発言の自由が奪われただけでなく、将来にわたるすべての中野区議会議員の発言の自由が奪われかねません。副議長の行動は、議会から言論の自由を奪う暴挙です。議員が議会で自由に発言できなくなれば、区民の声が区政に届かなくなります。議事録が書き換えられてしまえば、区民が議会の議論を正確に知ることもできなくなります。そんな区議会でいいのか、中野の民主主義の根本が問われています。

 

党議員団の声明に大きな反響
 党議員団は今回の事態に対し、七月二日に「自民党・公明党による議員の発言権の侵害について」、七月十日に「副議長の職権による議事録削除に対する抗議声明」と二度にわたって声明を発表し、中野区議会における異常事態および民主主義破壊の暴挙を広く知らせる行動をとりました。また、七月十七日には記者会見をおこない、メディアにも広く取材を呼びかけました(写真)。
 声明を発表したことへの反響は大きく、X(旧ツイッター)上では、「人の意見を歪曲するなどもっともしてはいけない不正」、「自分たちに気に食わないから、消しちゃえって言語道断」、「その人に票を投じた有権者全員の口をふさぐこと」など、党議員団の立場に連帯する声が数多く寄せられました。道理のない副議長による職権での議事録削除は知られれば知られるほど、立場の違いを超えて、「民主主義を守るためにもそのままにしてはいけない問題」と多くの方に賛同を広げられるものだと感じています。

 

区民とも力を合わせ議事録の回復に向け奮闘する決意
 この問題は、私の発言が歪められたという問題であると同時に、規則上も法律上も問題のない発言を職権で削除したという中身の是非を超えた民主主義上の問題です。しかもこうした手続きが区民には非公開の議会運営協議会という場ですべておこなわれたことも大きな問題があります。党議員団としては議事録回復に向け、「民主主義を守れ」という一点で今回の議事録削除の撤回を求める超党派の共闘をつくるために努力しているところです。そうした中で非民主的な経過により議事録削除がおこなわれたことを問題視する議員もおり、賛同を広げる素地を感じています。
 同時にこの問題は議会内だけにとどめるのではなく、広く区民に事態を知らせることが必要であると感じています。今回、自民党・公明党がこのような暴挙に打って出たのは、区民が傍聴できない場で議論がおこなわれたことに起因するものが大きくあります。中野区は二〇一八年に酒井直人区長を誕生させ、党も与党の自治体です。酒井区政の実現に力を尽くしてきた「区民の声を聴く中野区政を実現する会」では、この問題での学習会を開催し、この問題を今後、広く区民に知らせていくための取り組みを相談しているところです。
 このような取り組みを通じて、中野区議会自身が今回の議事録削除を「民主主義を破壊する誤りであった」と認識し、是正するよう力を尽くしていきたいと考えています。

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